テレビやラジオの放送を、家庭用の受信機でそのまま流すなら、営利のお店でもJASRACへの手続きはいりません。 著作権法38条3項が、通常の家庭用の受信装置を使って放送を流すことを認めているからです。
ただし、次の場合はこの条文が使えないか、別の決まりがかかります。
- 放送を録音や録画して、あとで流す
- インターネット専用のラジオを流す
- 業務用の大型スクリーンなど、家庭用ではない受信装置を使う
- radikoで流す(radikoの規約が、個人の視聴を超える利用を認めていない)
お店にテレビを置く場合は、著作権とは別に、NHKとの受信契約が必要です。
法律が手続きなしで認めている流し方
著作権法は、作詞家や作曲家などに、放送された曲を受信装置で公に流す権利(公の伝達権、23条2項)を認めています。 そのうえで38条3項が、放送された著作物は、営利を目的とせず料金も受けない場合には受信装置で公に流せる、とし、続けて「通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。」と定めています。
文化庁の「著作権テキスト」(令和8年度版)は、この規定の例として喫茶店に置いてあるテレビを挙げ、通常の家庭用の受信機を使う場合は営利目的でも構わないと説明しています。 つまり、お店に置いた家庭用のテレビやラジオで、放送をそのまま流すことは、手続きなしで認められています。 店舗のBGMをめぐる札幌地裁の判決(2018年)も、通常の家庭用の受信装置でラジオなどの放送をそのまま流す場合は、店舗のBGMでも著作権の侵害にならないと述べています。
38条3項の対象は、地上波などの放送のほか、有線放送や、放送と同時に、または放送中に始まるインターネット配信(放送同時配信等)も含みます。 放送が終わった後に始まる見逃しや聴き逃しの配信は、対象から除かれています。 JASRACのよくある質問も、テレビやラジオの放送のほか、放送局が行っている同時配信や追っかけ配信を流す場合も、手続きはいらないと回答しています。
手続きが必要になる場合
| 流し方 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 家庭用のテレビやラジオで、放送をそのまま流す | 手続き不要 | 38条3項 |
| 放送局の同時配信や追っかけ配信を流す | 手続き不要(JASRACのよくある質問) | 38条3項は放送同時配信等も対象 |
| 放送を録音や録画して、あとで流す | 原則として手続きが必要 | 放送の受信ではないので38条3項が使えない |
| 聴き逃しやタイムフリーなど、放送が終わってから始まる配信を流す | 38条3項の対象外 | 条文が、放送が終わった後に始まる配信を除いている |
| インターネット専用のラジオを流す | 原則として手続きが必要(JASRACの案内) | 放送ではない |
| 家庭用ではない受信装置を使う | 原則として手続きが必要(JASRACの案内) | 38条3項の「通常の家庭用受信装置」にあたらない |
録音や録画して流す場合
家で録音や録画した番組をお店で流すのは、放送を受信して流すことではないので、38条3項は使えません。 家で録るときは私的使用(個人や家庭内での使用)として認められていますが、その録音や録画をお店で使うと、著作権法49条1項により、許可なく複製したものとみなされます。 JASRACの案内も、放送を録音して流す場合は原則として手続きが必要だとしています。
家庭用ではない受信装置を使う場合
38条3項の後半が認めているのは、通常の家庭用の受信装置を使う場合です。 何インチまでが家庭用か、といった公式の基準は見つかりませんでした。
テレビの映像を大型のスクリーンなど画面を拡大する特別な装置で流す場合は、番組や曲の著作権者の権利に加えて、放送局の権利(テレビジョン放送の伝達権、著作権法100条)もかかります。 スポーツ中継を大きなスクリーンで流すようなお店では、放送局の許諾が必要になる場合があるので、JASRACの担当支部や放送局に確かめておきます。
radikoやらじる★らじるで流す場合
radikoのユーザー規約は、3条で、サービスとコンテンツを「ユーザー本人の」個人的な視聴を超えて利用することはできないと定めています。 お店でお客さんに聞かせることは、個人的な視聴を超える利用にあたるので、radikoのアプリで流すことは規約上できません。
これは著作権法の手続きとは別の、radikoとの契約(規約)の問題です。 JASRACに手続きをしても、radikoの規約に反していることは変わりません。
NHKのらじる★らじるについては、NHKインターネットサービス利用規約に「個人利用に限る」という書き方はありません。 一方で、禁止事項として、コンテンツの公の伝達(著作権法で例外的に許される場合を除く)と、サービスに関連して営利を目的とする行為を挙げています。 お店で流してよいかについてのNHKの公式の説明は見つからなかったので、使う前にNHKに確かめてください。
補足
店舗BGMサービスのOTORAKUは、ヘルプで、アプリの中でradikoを使えると案内しています(使える放送局は、契約した店舗の地域のものです)。お店でラジオ番組を流したいなら、こうしたサービスを通して使う方法もあります。
お店にテレビを置くときのNHKの受信契約
お店にテレビを置く場合は、著作権の手続きとは別に、放送法にもとづくNHKとの受信契約が必要です。 NHKの受信料の窓口は、店舗などの事業所も、テレビなどを置いた場合は受信契約が必要だと案内しています。
- 契約の単位は、設置場所(部屋など)ごと
- 住居とつながった小さな理髪店や飲食店などは、世帯で受信契約をしていれば、別の契約はいらない
- 同じ敷地内のすべての受信機について契約し、まとめて払うと、2契約目以降が半額になる(事業所割引)
- ラジオだけを置く場合は、受信契約の対象外
2026年の法改正の影響
2026年6月に成立した著作権法の改正で、CDや配信音源をお店で流したときに、歌手や演奏者、レコード会社が使用料を受け取れる新しい権利(レコード演奏・伝達権)がつくられることになりました。
この新しい権利も、放送や放送同時配信等を、通常の家庭用の受信装置で流す場合は対象外とされています(文化庁の公布通知)。 施行は2029年6月までのどこかで、金額や払い方はまだ決まっていません(「2026年の著作権法改正で店舗BGMはどう変わるのか」)。
ラジオやテレビを流すか、BGMサービスにするか
家庭用のラジオで放送をそのまま流すのは、費用のかからない方法です。 ただし、流れる番組や曲はお店で選べず、ニュースやトーク、CMも流れます。 お店の雰囲気に合う曲だけを流したい、時間帯で曲調を変えたいなら、店舗BGMサービスを使います。
| サービス | 総合評価 | 月額(税込) | 初期費用 | 無料体験 | 著作権 | 公式 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| モンスター・チャンネル | 4.6 | 2,068円〜 | 0円 | 14日間無料(支払情報の入力不要) | ○ 手続き込み | 見る |
| BGM Pro | 4.2 | 980円〜 | 0円 | 7日間無料(カード登録不要) | ○ 手続き不要 | 見る |
| BGM House | 4.0 | 1,089円〜 | 0円 | 7日間無料(カード登録不要) | ○ 手続き不要 | 見る |
| FaRao PRO | 4.0 | 3,300円〜 | 15,000円(税抜) | 14日間無料 | ○ 手続き込み | 見る |
| OTORAKU(オトラク) | 4.0 | 3,608円〜 | 3,300円(税込) | 登録した月のうちに解約すれば無料(最大31日間) | ○ 手続き込み | 見る |
総合評価の上位5つを表示しています。全9サービスの比較は「店舗BGMサービスの比較」で見られます。
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BGM Proを無料で試す著作権の全体像は「店舗BGMの著作権」で、個人向けの音楽配信サービスの規約は「Spotifyをお店で流してもいいのか」で説明しています。
参考資料
いずれも2026年10月6日に確認