お店で音楽を流すには、原則としてJASRAC(日本音楽著作権協会)などに手続きをして、使用料を払う必要があります。 お店の広さは関係なく、小さなカフェでも同じです。
方法は次の3つです。
- 店舗BGMサービスを契約する(手続きはサービス側が済ませている)
- 自分でJASRACと契約して、CDなどを流す
- JASRACなどが管理していない音源だけを流す
SpotifyやYouTubeのような個人向けサービスをお店で流すことは、どのサービスも利用規約で認めていません。 以下では、それぞれの方法の費用と注意点を、JASRACの使用料規程と各社の規約をもとに見ていきます。
なぜお店で音楽を流すのに許可がいるのか
著作権法は、作詞家や作曲家に演奏権を認めています(著作権法22条)。 お客さんのような不特定または多数の人に聞かせる目的で、曲を演奏する権利です。
この「演奏」には、CDなど録音された音楽を再生することも含まれます(著作権法2条7項)。 配信や有線放送を受信して店内に流すことも、「公の伝達」として権利の対象です(著作権法23条2項)。 そのため、お店で音楽を流してお客さんに聞かせるには、権利者の許可がいります。
多くの曲の権利は、JASRACなどの管理団体が預かっています。 お店は管理団体と契約して使用料を払えば、預けられている曲についてまとめて許可を得られます。
お店で音楽を流す3つの方法
| 方法 | お店の手続き | 費用の目安 | 向いているお店 |
|---|---|---|---|
| 店舗BGMサービスを契約する | 不要 | 月980円から6,000円程度 | 手間をかけずに始めたいお店 |
| 自分でJASRACと契約する | 必要 | 年6,570円(税込、500㎡まで)と音源代 | 手持ちのCDを流したいお店 |
| 管理されていない音源だけを流す | 不要(音源の利用条件は確認する) | 音源による | 曲を自分で選んで用意できるお店 |
1. 店舗BGMサービスを契約する
いちばん手間がかからないのは、店舗向けのBGMサービスです。 JASRACと契約している事業者の音源を使うなら、お店が自分でJASRACに手続きをする必要はありません。 事業者が、契約しているお店の分もまとめて使用料を払っているからです。
JASRACと契約している事業者の一覧は、JASRACのサイトで公開されています。 公式サイトにJASRACやNexToneの許諾番号を載せているサービスもあります。
JASRACが管理する曲を使わず、AIで作った曲やパブリックドメイン(著作権の切れた)音源だけを配信するサービスもあります。 この場合も、今の制度ではお店の手続きはいりません(2026年の法改正後の扱いは後述)。
ポイント
サービスを選ぶときは、公式サイトに「著作権の手続きが料金に含まれている」か「管理されている曲を使っていない」かのどちらかが書かれているかを確かめましょう。
2. 自分でJASRACと契約してCDなどを流す
手持ちのCDを流したいなら、お店の経営者がJASRACと契約します。 BGMだけの利用なら、JASRACのサイトからオンラインで申し込めます。
年間契約の使用料は、お店の面積で決まります。
| 店舗の面積 | 年額(税抜) |
|---|---|
| 500㎡まで | 6,000円 |
| 1,000㎡まで | 10,000円 |
| 3,000㎡まで | 20,000円 |
| 6,000㎡まで | 30,000円 |
| 9,000㎡まで | 40,000円 |
| 9,000㎡超 | 50,000円 |
2024年10月からは、この金額に「JASRACが管理する曲の利用割合」を掛けて請求するようになりました。 2026年度の割合は99.55%で、500㎡までのお店の実際の請求額は6,570円(税込)です。
注意
CDの曲をCD-Rやパソコンにコピーして流すなら、演奏とは別に「複製」の手続きもいります。
申し込みの流れは「お店のBGMをJASRACに申し込む方法と料金」で詳しく説明しています。
3. 管理されていない音源だけを流す
著作権の切れた曲や、JASRACが演奏の権利を管理していない曲だけを流すなら、JASRACへの手続きはいりません。
ただし、「著作権フリー」と書かれた音源にも、管理されている曲が混ざっていることがあります。 JASRACの作品データベース(J-WID)やNexToneの作品検索で、管理されている曲かどうかを調べられます。 管理されていない曲でも、権利者が決めた利用条件(お店で使ってよいか、クレジット表記が必要かなど)には従います。
AIで作った音楽については、文化審議会著作権分科会の法制度小委員会が「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)を取りまとめ、文化庁が公開しています。 既存の曲をもとにして、それに似た曲を生成し利用した場合は、著作権の侵害になり得るとされています。 詳しくは「著作権フリーの音源やAIで作った音楽は、お店で流せる?」で説明しています。
補足
2026年の法改正が施行されると、作曲の著作権が切れた曲やJASRACが管理していない曲でも、CDや配信音源(商業用レコード)として流す場合は、新しい使用料の対象になる可能性があります。
規約やルールで認められていない流し方
個人向けの音楽配信サービス
主な個人向けサービスは、どれも利用規約でお店での利用を認めていません。
| サービス | 規約の内容 |
|---|---|
| Spotify | 利用は「個人利用および非商業利用」に限られる |
| Apple Music | 「個人利用および非商用利用のみ」 |
| YouTube | 不特定または多数の人のために音楽をストリーミングすることを禁止 |
| Amazon Music | 個人の非商用的な娯楽目的に限り、公の演奏の権利は与えない |
| LINE MUSIC | LINEヤフーが、お店のBGMとしての利用は規約違反だと案内 |
JASRACに使用料を払っても、これらのサービスをお店で流してよいことにはなりません。 著作権の手続きは権利者との関係、利用規約はサービス会社との契約で、別の問題だからです。 サービスごとの規約は「Spotifyをお店で流してもいいのか」「YouTubeをお店のBGMにしてもいいのか」「Apple MusicやAmazon Musicはお店で流せるのか」で説明しています。
ラジオとテレビ
テレビやラジオの放送を受信して、そのまま流すなら、JASRACへの手続きはいりません(著作権法38条3項)。
インターネット専用のラジオ、放送を録音したもの、家庭用ではない受信装置を使う場合は、原則として手続きが必要です。 radikoは、法律とは別に、ユーザー規約で個人的な視聴を超える利用を認めていません。 録音や録画の扱い、テレビを置くときのNHKの受信契約は「ラジオやテレビをお店で流してもいいのか」で説明しています。
使用料が免除されるのはどんな場合か
JASRACの使用料規程は、次の利用について「当分の間、使用料を免除する」としています。 営利を目的としないなど、著作権法38条1項によってそもそも許可がいらない利用は、この免除とは別の扱いです。
- 福祉施設、医療機関、教育機関での利用
- 事務所や工場などで、おもに従業員に聞かせる利用
- 露店などでの、短い時間のささやかな利用
医療機関は、医療法や介護保険法にもとづく施設を指します。 いずれも「当分の間」の扱いで、ずっと続くとは限りません。 一般のお店には、広さによる免除はありません。
手続きをしないまま流していた場合にどうなるかは「店舗BGMの著作権違反はどうなるのか」で、JASRACの請求の流れと裁判の実例を紹介しています。
2026年の法改正で何が変わるのか
2026年6月に著作権法が改正され、CDや配信音源をお店で流したときに、歌手や演奏者、レコード会社にも使用料を払う仕組み(レコード演奏・伝達権)ができました。
払うのは音楽を流すお店の側で、施行は2029年6月までのどこかです。 金額や払い方(BGMサービスを通して払うのかなど)は、まだ決まっていません。 詳しくは「2026年の著作権法改正で店舗BGMはどう変わるのか」をご覧ください。
3つの方法のどれを選ぶか
手間をかけずに始めたいなら、著作権の手続きが料金に含まれている店舗BGMサービスが確実です。 流したい曲が手元のCDに決まっているなら、自分でJASRACと契約するほうが、月々の費用を抑えられることがあります。 管理されていない音源だけで揃える方法は費用がかかりにくい反面、1曲ずつ利用条件を確かめる手間がかかります。
サービスごとの料金や特徴は「店舗BGMサービスの比較」で比べられます。
参考資料
いずれも2026年10月5日に確認