店舗BGMと著作権

店舗BGMの著作権違反はどうなる?JASRACの請求の流れ、裁判の実例、罰則

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カフェ店主
開店してから手続きをせずにCDを流していました。JASRACから連絡が来たら、どうなるのでしょうか?
編集部
多くの場合、まず手続きの案内が届きます。すぐに裁判や罰金になるわけではないので、流れを確かめて、早めに手続きをしましょう。

JASRACが管理する曲を、手続きをしないままお店で流していると、まずJASRACから文書や電話、訪問で手続きの案内があります。 繰り返しの案内に応じないと、JASRACは簡易裁判所に民事調停を申し立て、それでも応じない場合は地方裁判所に訴えを起こしてきました。

裁判になった店舗のBGMの判決では、曲を流すことの差止めと、JASRACが請求した期間の使用料にあたる額の支払いが命じられています。

著作権法には、10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金という刑事罰の規定もあります。 ただし、告訴がなければ起訴できない親告罪で、店舗のBGMで刑事事件になった例は確認できませんでした。

JASRACから連絡が来るまで

JASRACのよくある質問は、音楽の利用状況を確かめたり、BGMの契約を案内したりするために、文書の送付や電話、訪問で連絡することがあると回答しています。 2019年のJASRACの発表でも、無許諾でBGMを流している事業者に、文書、電話、訪問などで手続きの案内を強めているとしていました。

裁判になった例では、JASRACの職員がお客さんとして来店し、流れている曲を調べています。

民事調停の実例

JASRACは、2015年から2018年にかけて毎年、手続きをしていない店舗に対して、まとめて民事調停を申し立てたと発表しています。

発表 対象 主な業種
2015年6月 171事業者、258施設 美容室、理容店、アパレル店、飲食店など
2016年6月 187事業者、212店舗 うち132事業者、151施設が美容室
2017年6月 178事業者、352店舗 うち163事業者、205店舗が美容室
2018年7月 22都道府県の151事業者、166店舗 美容室73店舗、飲食店75店舗など

2015年と2018年の発表は、繰り返し契約を求めても手続きに応じなかった店舗が対象だと説明しています。 調停が成立した件数などの結果は、発表されていません。

裁判になった実例

民事調停でも契約に応じなかった店舗に対して、JASRACは本案の訴訟を起こしました。 裁判所のウェブサイトで、店舗のBGMについての判決を2件確かめられます。

判決 お店 判決の内容
札幌地裁 2018年(平成30年)3月19日 理容店(33㎡) 携帯音楽プレーヤーなどで曲を流すことの差止めと、3万1104円の支払い
福岡地裁 2019年(令和元年)11月26日 パブなど9店舗 曲を流すことの差止めと、40万8240円の支払い

札幌の判決では、使用料規程は文化庁長官に届け出られたもので、金額は相当だとされました。 請求された期間は2014年5月から2017年6月までで、店はそれより前の2005年の開店から曲を流していました。 計算は、前半の2年間が当時の規程の年額6,000円、後半の14か月が新しい規程の月額1,200円です(いずれも税抜)。 新しい規程の年額は、年間の契約を結ぶ場合にだけ使われるもので、この事件の損害に当てはめるのは相当でない、という理由です。

福岡の判決では、経営者側が期日に出てこないか、JASRACの主張を争わなかったため、主張どおりに認められました。 請求された期間は2015年4月から2019年4月までで、計算は前半の2年間が年額、後半の25か月が月額です。

「著作権フリー」の表示を信じていた場合

札幌の判決では、店側が、流していた曲の一部はほかのサイトでパブリックドメインなどのマーク付きで配られていた、と主張しました。 判決は、誰でもマークを付けられるサイトの表示は、権利の対象でないことの保証にならないとし、JASRACのデータベースなどで調べなかった店の過失を認めています。 JASRACの説明が足りなかったという店の主張に対しても、店舗で曲をBGMとして流す以上、自分で権利関係を調べなければならない、としています。 「著作権フリー」と書かれていても、JASRACなどが管理する曲が混ざっていないかを確かめる必要があります(「著作権フリーの音源やAIで作った音楽は、お店で流せる?」)。

請求される金額の考え方

著作権法114条3項は、著作権を侵害された人が、本来受け取るはずだった使用料にあたる額を、損害として請求できると定めています。 114条4項は、JASRACのような管理事業者の曲なら、使用料規程で計算した額を使えるとし、計算の方法が複数あるときは、その中で最も高い額を使えるとしています。

損害賠償を請求できる根拠は民法709条で、114条3項と4項は、その損害の額の決め方を定めています。 損害賠償のほかに、民法703条と704条による不当利得の返還も請求できます。 JASRACが、手続きをしていなかった店舗に何年分さかのぼって請求するのかは、公式の説明が見つかりませんでした。 上の2つの判決では、請求された期間はどちらも3年から4年ほどでした。

刑事罰の規定

著作権法は、著作権を侵害した人への刑事罰も定めています。

規定 中身
119条1項 10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方
124条1項 法人の業務として侵害した場合、法人に3億円以下の罰金
123条1項 119条1項の罪は、告訴がなければ起訴できない(親告罪)

JASRACの発表で確認できた音楽の刑事事件は、カラオケや演奏会のものです。 たとえば、裁判所の仮処分でカラオケの機器が封印された後に、封印を破って無断で使い続けた事案などで、民事の手続きを経ても無断で使い続けたケースでした。 店舗のBGMで刑事事件になった例は、裁判所の判例検索やJASRACの発表では確認できませんでした。

今から手続きをする方法

手続きをしていなかったことに気づいたら、次のどちらかで、これから流す分を正しい状態にします。

  1. 自分でJASRACと契約する。BGMだけの利用なら、JASRACのサイトからオンラインで申し込める。500㎡までのお店なら年6,570円(税込、2026年度)
  2. JASRACと契約している事業者の店舗BGMサービスに切り替える。JASRACのよくある質問は、音源提供事業者の一覧に載っている事業者のサービスを使っている場合は、お店の手続きはいらないとしている

これまで流していた分の扱いは、JASRACの公式の説明が見つかりませんでした。 JASRACから案内が届いている場合は、放っておかずに、案内に書かれた連絡先に相談します。 支払いの範囲などで争いになりそうなら、弁護士に相談することも考えます。

SpotifyやYouTubeのような個人向けサービスは、JASRACと契約しても規約上お店では使えないので、切り替え先にはなりません(「Spotifyをお店で流してもいいのか」)。

店舗BGMサービスの比較表
サービス総合評価月額(税込)初期費用無料体験著作権公式
モンスター・チャンネル4.62,068円〜0円14日間無料(支払情報の入力不要)○ 手続き込み見る
BGM Pro4.2980円〜0円7日間無料(カード登録不要)○ 手続き不要見る
BGM House4.01,089円〜0円7日間無料(カード登録不要)○ 手続き不要見る
FaRao PRO4.03,300円〜15,000円(税抜)14日間無料○ 手続き込み見る
OTORAKU(オトラク)4.03,608円〜3,300円(税込)登録した月のうちに解約すれば無料(最大31日間)○ 手続き込み見る

総合評価の上位5つを表示しています。全9サービスの比較は「店舗BGMサービスの比較」で見られます。

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JASRACへの申し込み方は「お店のBGMをJASRACに申し込む方法と料金」で、著作権の全体像は「店舗BGMの著作権」で説明しています。

参考資料

いずれも2026年10月6日に確認。JASRACの2015年から2019年の発表は、JASRACのサイトから削除されているため、Internet Archiveの保存版を挙げています

よくある質問

JASRACと契約せずにBGMを流していると、すぐに逮捕されますか?
著作権法には刑事罰の規定がありますが、告訴がなければ起訴できない親告罪です。店舗のBGMで実際に起きているのは、JASRACからの案内や催告、民事調停、裁判といった民事の手続きで、店舗のBGMで刑事事件になった例は確認できませんでした。
裁判になると、いくら払うことになりますか?
これまでの判決では、流すことの差止めと、JASRACが請求した期間の使用料にあたる額の支払いが命じられています。理容店1店舗の判決では約3年2か月分で3万1104円、パブ9店舗の判決では約4年1か月分で40万8240円でした。どちらも、新しい使用料規程の期間は、年額ではなく月額の使用料で計算されています。
「著作権フリー」と書かれた音源を流していた場合も、責任を問われますか?
問われることがあります。札幌地裁の判決では、曲がほかのサイトでパブリックドメインなどのマーク付きで配られていたという店の主張は認められず、誰でもマークを付けられるサイトの表示は保証にならないとして、JASRACのデータベースなどで調べなかった店の過失が認められました。

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